イタズラが科学のはじまり?

少し前に、『おおいたの光』(テレビDeラジオ)という番組に出演させていただきました。その時に、初めてお話ししたことがあります。 6、7歳くらいの頃の話です。
ある日のお昼ご飯は、めったに出てこない、 大好きな「とんこつラーメン」でした。 遊びに夢中だった私は、さっさとお昼ご飯を済ませました。 いつものんびり食べる妹は、なかなかご飯を食べにきません。 そこで私は、確信犯的なイタズラを思いつきました。 妹のラーメンに、砂糖をたっぷり入れたのです。 ワクワクしながら、 「とんこつラーメンばい、うまかよ!はよ食べんと!」 と、妹をかきたてました。 無邪気な妹は、砂糖たっぷりのラーメンを口にして、妙な顔をしました。 もう一度口にして、 「変な味がする!」と叫びます。 私は 「そりゃ、そーやろ!」と大笑い。 妹は、いつも実験台。 意地悪な兄です……。
ただ、私には秘策がありました。 「魔法の粉があるから大丈夫!」 自信満々に妹に言いました。 そして、塩をたっぷり入れました。 そう、【砂糖の甘さ】を【塩のしょっぱさ】で打ち消そうとしたのです。 「ほら、食べてみろ!」 妹はラーメンを口にしたとたん、吐き出して泣きだしました。 「お母さ~ん、お兄ちゃんがラーメンに砂糖と塩を入れた!」 食べてみると、確かになんとも耐え難い味がします。
そこで私はさらに、塩と砂糖を繰り返し継ぎ足して、なんとか元の味に戻そうと試みました。 ところが、入れれば入れるほど、どんどん酷い味になっていきます。 「なんばしよっとかいな」 母が眉間にシワを寄せています。 そこへ父がやってきました。 私は焦りながらも、なんとか正当化しようと 「砂糖と塩を混ぜても、味が戻らんっちゃけど……」 すると父は 「塩と砂糖は、全く反対じゃないけんたい」 と言いました。 「しょっぱいと甘いは、反対じゃない?!」 私はどうしても納得できません。
さらに砂糖と塩を加えて、なんとか味を調整しようとします。 焦る気持ちは募るばかり。 そろそろ両親からこっぴどく怒られる…… と冷や冷やしていました。 ところが、不思議なことに、父はなんだか納得しているようにも見えました。 母は、妹のラーメンを作り直し始めました。結局、この時は両親から怒られることもなく、私はなんとも妙な気持ちになりました。
その後、プラスとマイナス、S極とN極、酸性とアルカリ性など 科学的に「まったく反対」の性質を学ぶたびに、私は「砂糖・塩」事件のことを思い出しました。 そして 「ああ、父が言っていたのは、こういうことだったのか」 と、少しずつ腑に落ちていきました。
昨年、そして今年と相次いでこの世を去った両親に、今となっては確認することはできません。 けれど、共に教育に携わった両親だったからこそ、 私のこのイタズラを、もしかしたら「学びの始まり」として喜んでくれていたのかもしれません。
先日、妹にこの話をすると 「あれは酷かった」と笑っていました。 そして、私は全く覚えていないのですが、 あの事件の後、 「麦茶に醤油を入れた」 らしいです。 諦めきれずに砂糖で戻そうとしたのか。 それとも、別の秘策があったのか。 はたまた、ただのイタズラだったのか……。
両親への感謝と、妹との思い出話。 昔を懐かしんだ、夏でした。 我が子のイタズラも、これからもしっかりと見守っていきたいと思います。